【登辞林】(登記関連用語集)


[き]

供託 (1)最終的に取得する者が未定である金銭や物などを、一時的にある場所や人に預けること。
(2)債務の消滅等一定の法律上の効果を与え、又は、担保・保証等を目的として、法令の規定により、金銭、有価証券、振替国債、その他の物を、供託所に預け入れること(供託法第1条、供託規則第1条、社債等の振替に関する法律(平成13年6月27日法律第75号)第129条)。供託の法律的性質については、私法上の寄託契約であるとする説、公法上の寄託関係であるとする説等諸説存在し、判例は、弁済供託について、供託による権利変動の面では、民法上の寄託契約の性質を有し、供託官の処分の面では、行政処分であると判示している。さらにこの寄託契約については、第三者のためにする契約の性質を有するが、第三者(債権者)の受益の意思表示は必要でない、と解されている。(→代供託)(→附属供託

供託カード 賃料、給料その他の継続的給付に係る金銭の供託をする者が、供託カードの交付を受け、爾後の供託につき、このカードを提示し、供託書については、供託者の氏名・住所、供託カードの番号等を記載することにより、供託の原因たる事実や、供託所の表示などの記載を省略することができるもの(供託規則第13条の4、第13条第2項)。

供託官 供託所に於ける事務を取り扱う者として、法務局長又は地方法務局長に指定された法務局に勤務する法務事務官(供託法第1条の2)。(→登記官

供託規則 昭和34年1月17日法務省令第2号。供託の目的物が、金銭、有価証券及び振替国債である場合の手続きに関する細目を定めた規則。

供託金 供託の目的物(供託物)たる金銭。供託金には利息が付される(供託法第3条)。

供託金利息 供託の目的物(供託物)が金銭である場合に付される利息(供託法第3条)。供託金利息は年0.024%である(供託規則第33条第1項)。供託金利息は、供託金受入れの月及び払渡しの月については付されず、又、供託金に1万円未満の端数があるときは、その端数金額(供託金の全額が1万円未満であるときは、その全額)に対しても付されない(供託規則第33条第2項)。
この供託金利息は、平成3年4月1日〜平成6年3月31日は、年1.2%、平成6年4月1日〜平成8年3月31日は、年0.6%、平成8年4月1日〜平成10年3月31日は、年0.24%、平成10年4月1日〜平成14年3月31日は、年0.12%であった。

供託原因 各供託の根拠法令に基づき、供託をすることができることとなる原因、又は、供託をする義務が生じる原因。供託をするには、供託原因があることを要し、供託原因が消滅すると、供託物の取戻しの事由となる。

供託所 供託物を保管し、供託に関する事務を取扱う機関で、法務局・地方法務局・これらの支局、又は法務大臣が指定する出張所(供託法1条)、法務大臣の指定する倉庫営業者又は銀行(供託法第5条第1項)、弁済供託における弁済者の請求に基づく裁判所の指定によるもの(民法第495条第2項、非訟事件手続法第81条第1項)がある。現在、法務大臣の指定する倉庫営業者としては、三菱倉庫(株)他、十数社あるが、指定を受けた銀行は無い。供託の目的物は、ほとんどが、金銭、有価証券、振替国債であるため、「供託所」というと、一般に、法務局のことを指す。
供託所の管轄については、供託法に一般的な規定はなく、各供託根拠法令によることになる。

供託書 供託をしようとする者が、供託物を添えて提出する、法務大臣により定められた書式による書面(供託法第2条、供託規則第13条第1項)。金銭その他の物の数量を記載するには、アラビア数字(ただし、縦書をするときは、「壱、弐、参、拾」の文字)を用いなければならない(供託規則第6条第2項)。記載した文字は、改変してはならない(よって、改変可能な鉛筆などの筆記用具は使用できない、供託規則6条3項)。記載事項について訂正、加入又は削除をするときは、二線を引いてその近接箇所に正書し、その字数を欄外に記載して押印し、訂正又は削除をした文字は、なお読むことができるようにしておかなければならないが、供託者又は請求者が供託書、供託通知書の記載事項について訂正、加入又は削除をするときは、これらの書面に押印することを要しない(供託規則6条4項)。供託書、供託通知書に記載した供託金額、有価証券の枚数及び総額面については、訂正、加入又は削除をしてはならない(供託規則第6条第6項)。

供託通知書 弁済供託あるいは弁済供託の性質を有する供託について、被供託者に対して、供託物の交付を受けることができる権利(還付請求権)の発生したことを知らせるための書面(民法第494条第3項参照)。

供託の原因たる事実 供託書に記載すべき、供託原因とその基礎となる事実。供託に至るまでの経緯等を記載する。(供託規則第13条第2項4号)

供託物 供託の目的たる財産。供託物とすることができるのは、金銭、有価証券、振替国債、その他の物である(供託法第1条、第5条第1項、供託規則第1条)。
金銭は、日本の通貨に限られ、外国の通貨は金銭として供託することはできない。供託物が金銭である場合の当該供託金の納入方法は、現金の受け入れを取り扱う供託所においては、直接供託金を納入し、現金の受け入れを取り扱わない供託所においては、供託所での供託申請の受理後、日本銀行もしくはその代理店に払込みをする方法によることができる他、前記いずれの供託所においても、供託官の当座預金口座に供託金を振り込む方法、又は、電子納付をする方法によることができる。現金の受け入れを取り扱うものとして、法務大臣の告示により指定を受けている供託所は、全国の各法務局・地方法務局の本局、東京法務局八王子支局、福岡法務局北九州支局である。
供託物が有価証券である場合は、日本銀行もしくはその代理店に供託物を提出し、供託物が振替国際である場合は、日本銀行もしくはその代理店の供託所の口座へ振替申請をする方法による。
その他の物として、動産の他、不動産も供託が可能である(土地収用法(昭和26年6月9日法律第219号)第95条第5項、道路法(昭和27年6月10日法律第180号)第94条第3項参照)。供託物が金銭及び有価証券以外の物である場合は、法務大臣が指定する倉庫営業者又は銀行に供託書と共に供託物を交付する(供託法第5条第1項、第6条)。
供託所に供託された供託金及び有価証券は、日本銀行に寄託される(予算決算及び会計令(昭和22年4月30日勅令第165号)第103条、第104条。)。この供託所と日本銀行の関係は、委任と寄託の混合契約であると解されている。

供託物保管者 弁済供託において、供託所について法令に別段の定めがない場合に、弁済者の請求に基づき裁判所が選任する供託物の保管者(民法第495条第2項、非訟事件手続法第81条第1項)。

供託法 明治32年2月8日法律第15号。供託に関する基本的な事項を定めた法律。供託の義務又は権利、管轄、効果などは規定されておらず、これらについては、供託の根拠となる各法の規定によることになる(民法第494条。公職選挙法第92条、宅地建物取引業法第25条、民事執行法第91条、第156条等)

供託有価証券寄託書 供託物が有価証券である供託につき、供託が受理された際に供託書正本とともに交付される書面で、供託書正本、当該有価証券と併せて日本銀行(またはその代理店)に提出することを要するもの(供託規則第18条第1項)。指定された納入期日までに有価証券を納入しないときは、供託受理の決定はその効力を失う(供託規則第18条第2項)。

供託有価証券利札請求書 担保供託保証供託)として有価証券を供託した場合に、当該有価証券の利札(利息債権を表章する無記名債券)の支払期が到来し、利札のみの払渡しを請求する際に提出する書面(供託法第4条但書、供託規則第36条)。

協調融資(→シンジケートローン

(株)共同債権管理機構 平成5年1月27日、民間金融機関等の共同出資により、金融機関等の不良債権の買取を目的として設立された。東京都千代田区神田神保町三丁目29番地。平成16年3月26日、株主総会の決議により解散。平成16年8月17日清算結了

共同住宅 一般的には、アパート、マンション、二世帯住宅等、複数世帯が独立して居住できる構造の住宅。不動産登記上は、不動産登記規則第113条に規定する建物の種類のひとつであり、一般的に共同住宅と呼ばれる建物のうち、各住戸につき区分建物の登記がされていないもの。一般的に共同住宅と呼ばれるものでも、不動産登記上、区分建物として登記された住戸については、各専有部分の建物の種類は、「居宅」となる。

協同住宅ローン(株) 特定住宅金融専門会社が破綻した際に存在した住宅金融専門会社で、現存する1社。昭和54年8月10日設立。昭和58年4月18日、東京都千代田区内神田一丁目1番12号から、東京都千代田区有楽町一丁目9番4号へ本店移転。平成11年1月18日、東京都目黒区中央町一丁目15番3号へ本店移転。

共同所有 広く複数人で物を所有することをいい(広義の共有)、各共有者について持分の概念を有し、各共有者は自由にその持分を処分することのできる、民法249条以下の「狭義の共有」、持分の概念を有するがその処分を制限される「合有」、持分の概念を有しない「総有」を含む。

共同担保目録 複数の不動産又は不動産に関する権利を目的とする先取特権の保存、抵当権根抵当権の設定、根抵当権の分割譲渡等の登記申請があった場合に、登記官によって作成される目録。共同担保目録には、その作成年月日や記号及び目録番号のほか、目的たる不動産の表示等が記載される。

共同根抵当 (1)同一の債権の担保として、複数の不動産について設定された根抵当権で、狭義の共同根抵当(純粋共同根抵当)、及び、累積根抵当の双方。広義の共同根抵当。
(2)同一の債権の担保として、複数の不動産について設定された根抵当権(広義の共同根抵当)のうち、その設定登記と同時に、共同担保である旨の登記がされたもので、共同抵当(民法第392条、第393条)の規定の適用を受けるもの。狭義の共同根抵当。通常、「共同根抵当」というと、狭義の共同根抵当のことを指す。共同根抵当権の被担保債権の範囲・債務者・極度額の変更、譲渡・一部譲渡は、その根抵当権が設定されているすべての不動産について登記をしなければ、その効力を生じない(民法第398条の17第1項)。共同根抵当権の担保すべき元本は、一個の不動産についてのみ確定すべき事由が生じた場合であっても、全ての不動産について確定する(民法第398条の17第1項)。
共同根抵当権について、累積式の根抵当権に変更することはできない(登記研究315号75頁)。複数の物件についてされている累積式の根抵当権設定仮登記につき、共同根抵当権とする本登記を申請することができる(登記研究424号222頁)。甲、乙物件につき共同担保として根抵当権設定の登記がされている場合において、甲物件、又は、乙物件のみについて、丙物件を追加担保とする根抵当権の設定登記申請は受理されない(昭和46年10月4日民事甲第3230号民事局長通達第14、3)。共同根抵当権設定の仮登記の申請は受理されない(昭和47年11月25日民事甲第4945号民事局長回答)。

共同不法行為 数人が共同して行う不法行為。共同不法行為者は、各自が連帯してその損害を賠償する責任を負い(連帯債務)、共同行為者のうち、誰が損害を与えたか不明であるときは、共同行為者が連帯してその損害を賠償する責任を負う(民法第719条第1項)。行為を教唆した者、幇助した者は、共同行為者とみなされ、同様の責任を負う(民法第719条第2項)。
配偶者内縁を含む)の一方が第三者と性的関係を持った場合、その一方配偶者は他方配偶者に対し不法行為者となるが、一方配偶者の相手をした第三者は、配偶者があることを知っていた場合には、共同不法行為者となる。

共同保証 同一の債務について、複数人が保証をすること。共同保証は、数人の通常の保証人によるものである場合と、数人の連帯保証人によるものである場合とがあり、さらに、数人の通常の保証人によるものである場合の中には、複数の保証人間で全額弁済の特約を有するもの(保証連帯)がある。共同保証人は、原則、それぞれ、債務を共同保証人の頭数で除した額の債務を負担する(分別の利益民法第456条、第427条)が、連帯保証、及び、保証連帯の場合は、分別の利益は否定される。

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